もともとビールは好きだったんですが、30年近く前にクラフトビールなるものが出てきたときに「銀河高原ビール」と出会い強い衝撃を受けました。当時はまだ「地ビール」と言ってましたかね。そこから地ビール工場が各地域に増え始めて。
それから、あっちこっちのクラフトビールを飲み歩きました。リサーチという名の(笑)。それですっかりハマってしまったんです。自分でやってみようと思い始めたきっかけは、家業のコンビニエンスストアを20年やってきて人生の岐路に立たされていた時期のこと。
自分の中でクラフトビール熱が高まっていて、あれこれ調べているうちに、意外と小規模でもビールの醸造を始められることを知りました。
家業のコンビニとどう兼業させていくかをしばらく模索していたんですが、地方にはいろんな方がいて、コンビニと中古レコード屋を同店舗で半々で営業されてる方なんかもいて(笑)こういうやり方もいいかなぁとか。そして、いざ2019年に本格的に始動しようと動きだしたところへコロナが・・・
2019年にこのあたりも含む古市古墳群が世界遺産になった。道明寺でもお土産物を作ろうという気運が盛り上がって来て、そのタイミングでまずコンビニの屋上に道明寺麦酒の看板を先に立てました。電車(近鉄南大阪線)から必ず見えるんですよ。密造してるの?と疑われたりもしましたが(笑)
醸造の場所を考えあぐねていたところ、道明寺天満宮の前ににぎわいの場所MONZENができる流れに。「ここしかない!」と一気に実現への道が拓けました。
醸造には、カナダのBIACというタンクを導入しています。マイクロブリュアリー向きで品質管理もしやすい、小ロットでも製造可能という、まさに小規模醸造の味方なんです。
美陵ビールというネーミングはわりとすんなり決まりました。美陵というのは古墳のことですが、このあたりも藤井寺市になる前は美陵町だった時代もあり、個人的にも好きな響きなんですよ。みささぎ。
南河内でも珍しい、藤井寺でも初となるクラフトビール「美陵ビール」。クラフトビールについては各社さんそれぞれ個性があって、他と比べてどうこう語れるものではないですね。とにかく試行錯誤を重ねて、とくに地産品(藤井寺はいちじくや梅が有名)を取り入れた商品は開発していきます。フィールドビール(野菜を使ったもの)にも挑戦していきたいですね。
僕は生まれも育ちも道明寺。醸造所のある道明寺天満宮界隈は、昔から南河内のにぎわいを作ってきたハブプレイスであり、そこに再びにぎわいを作るためのMONZENがオープン、その一角に道明寺麦酒を開くことになりました。
道明寺って何もないと思われているけれど、実はいろんな見所や名産があるんですが、住んでる人たちがそれを知らなかったりもする。そこにビールがあると、会話が生まれ、エリアのことを知ってもらうきっかけの場にもなるんじゃないかなと思っています。